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That depends 「傷の男」と呼ばれる国家錬金術師を狙う凶悪犯が現れた時、国家錬金術師に護衛をつけ、目立った行動を自粛させる方針が執られた。 東方司令部のロイ・マスタング大佐にもそれは当てはまった。 ロイ・マスタング大佐の護衛を担うべきは誰か―― その議論はすぐに終わった。当の本人が必要ないと言ったわけでもなく、立候補者がいなかったわけでもなく、それを担うことのできる人物が一人しかいなかったからだ。 リザ・ホークアイ中尉。 若いながらも中尉の座でマスタング大佐の補佐官として活躍している。女性ながらにイシュバール殲滅戦にも参加した強者である。 以前から補佐官として護衛じみたこともやってきている彼女がやはり適任だろうということで、何の反発があるわけでもなくあっさりと決まった。 しかしこの選択によって問題が起こることになるとは、誰も予測していなかったのだ。 当の、本人さえも。 報告がある、と彼女は言い、その内容を耳にした彼はなんでもなさそうに頷いた。 「では、かまいませんね」 「ああ。どうせ君に決まるだろうと思っていたさ」 「そうですか。それは好都合」 リザは手帳を取り出し、ロイの机にそっと置いた。それはロイの至極プライベートな手帳だった。研究手帳ではない。 「君、それは・・・・・・」 「ここしばらくデートの予定が詰まっているようですね。しかも全員違う女性と」 「プライバシーの侵害だ!」 「では、忘れ物はしないようにしてくださいね」 「・・・忘れ物?」 そこでロイは気づく。 この手帳は確かに置き忘れたのだ。予定を書き込んだ後にそのまま置き去りにしてしまった。よりによって彼女の机の上に。 「いやだからそれはその」 「見てくれと言わんばかりに置かれていましたから。誰の物か確かめようと思って中を見させていただきました。――大佐」 「・・・・・・はい」 これは一方的に自分に責任がある。よりによって置き忘れだ。ぐうの音も出ない。 「今はデートができる状況ですか?」 「・・・いいえ」 「私に貴方がデートをしている最中も護衛をしろと仰いますか?」 「・・・まさか」 「そうですね。ではどうぞ、ほとぼりが冷めるまではおあずけということで、断りの連絡をなさってください。全員に」 「中尉!さすがにそれは――」 「大佐」 リザは口の端を持ち上げる。一見すると笑っているようにも見えるが、目が笑っていない。 「常識を考えてください」 護衛がつけられる事態なんですよ? 「・・・・・・はい」 あまりの冷たい空気に、ロイはただ頷くしか出来なかった。 休み時間内ではとても終わらなかったため、残業代わりに予定のあった女性全員に電話をかけることになった。それだけならまだいいのだ。問題は、それが業務の妨げになるということ。そして、しばらくは彼が腑抜けになるのではないかという恐れがあることだ。 「・・・ああ、すまない。埋め合わせはまた今度。・・・え?いやそれはわからないが・・・ああ、わかった・・・・・・すまなかった。じゃあ」 ロイは受話器を置き、大きく溜息を吐く。 「これで何人目ですか?」 「えーと・・・」 「四人目です」 判っているなら聞かなくてもいいじゃないか、非難の目を向けるも、彼女はこちらを見ていない。 「今やらなくてもそのときに断わればいいじゃないか」 「それでまた電話口で泣かれた挙句貴方の仕事が遅れ、それで忙しくなるだけならまだしも刃物を持ち出されるような事態に発展させるんですか?」 「いやそれは・・・」 そんな気性の女性だとは思わずに付き合っていただけに、衝撃も大きかった。昼休みの出来事故に記憶にも新しい。あんなことになるのは確かに二度とごめんだ。 「総勢七名。元気ですね大佐。本命の彼女にも愛想をつかされますよ」 「・・・私は全員に本気のつもりだよ」 「一晩だけでしょう。それを本気で言っているんでしたら貴方は最低です」 何も言い返せぬまま、ロイは電話に向き合う。今度のデートのキャンセルと、これから先しばらくは会えないという旨を伝えるために。 「中尉」 「なんでしょう」 「しばらくデート無しの責任をとってくれ」 「は?」 「簡単だよ、君が彼女達に代わってデートしてくれればいい」 「おとなしくしていろと言われたでしょう。第一誰かの代わりなんてごめんです」 リザはロイの背中を見つめる。彼は受話器を手に持ったまま動かない。 「では言い方を変えよう」 ロイが受話器を置く。つられたように、リザも手にしていた手帳を机に置いた。 「もし、私の本命が君なんだと言ったらどうする?」 「笑い飛ばします」 まったく真剣に彼女は答えた。 その分だけ立ち直るのが遅れた気がする。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「もしもの話でしょう?」 「いやまあそれはそうなんだが告白紛いの事を言われたんだから少しは動揺とか」 「私、大佐には負けないようにしてるんです」 できるかぎり、見た目だけでも。 どうりでいつも勝てないわけだ。彼女が本気で負けないようにしようと決意していたら、勝てるはずがない。 しかし、ここで引き下がるわけにもいかない。『もしも』の話はあながち嘘ではないのだから。 「考えておいてくれ」 「何をですか?」 「デートの話」 「・・・時と場合によりますけど」 「充分だ」 時と場合により、君を手に入れられるなら。 多少の犠牲も惜しくはない。 |
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*POSTSCRIPT* 50000hit記念小説ー。 シリアスじゃなくて軽めの方です。軽めなだけに大佐も軽い感じです。 ダウンロードフリーなのでお持ち帰りも結構ですよー。 では、50000hitありがとうございました!! |